なぜ演劇を始めるのか。Part1

たまにふと思い返すことがある。
何故自分が演劇に出会い、ハマり、東京で劇団をつくるまでに至ったのか。
学生演劇経験も全くない人間が結婚して子供が産まれる中、
全く中身のわからない演劇会という閉鎖された世界に飛び込んでこれまで続けることができたのか。
自分にとって演劇と関わるということはどういうことなのか。
今思えば約20年、何足も草鞋を履きながらよくこれまで続けられてきたと思う。
もちろん、たくさんの方々のご指導とご協力があったからには違いないのだが、
それにしてもなんと充実した、もううんざりするような経験だったんだろう。
恐らくこの先まだまだ続くこの道を少し振り帰り、これから演劇を始めようかと
ふと、本当に何気なく思い始めている方々へのヒントに少しでもなればと思い
劇団付きの衣裳家の強い勧めもあり、ペンをもつ、いやキーボードを叩こうと思う。

きっかけ

22歳の秋、なんとなく演劇がしたくなった。
それまで、実際に劇場に足を運んだ劇といえば”劇団四季”しかなく(中学の頃「美女と野獣」を見て本当に感動したのを覚えている)
ストレートプレイ(歌やダンスはなく原則、役者の台詞の掛け合いのみで構成される劇)なんてものは一切見たことがなかったにも関わらずである。

それも一部上場企業の会社員で結婚を控えた時期に。
そう、でもなんとなくふとそう思ったので、「神戸、劇団、募集」というキーワード検索をして、新人募集していたとある劇団へ問い合わせをした。

ところが勇気を出して叩いた門は、劇団の代表が病気で休養しており活動停止中だという返信によりあっけなく閉ざされた。
あの時はまぁ仕方ないかとすんなり諦めてしまったことを覚えている。
これを読んでいる、これから演劇始めようかどうしようか迷われている皆さんなら恐らく同意して頂けると思うが、この入団前の劇団への問い合わせというのはとてもエネルギーのいる作業なのである。
なので、一度ダメになると腰が引けてしまい、さぁまた次!ということにはならなかった。
しかし実はそれが私の演劇への情熱に火をつける劇団と出逢うきっかけになったのだが。
それから1年後の秋、また演劇してみたい(演技してみたい?)という変な虫が動きだした。
当時インターネットの検索エンジンといえば「Yahoo!」しかなかったような気がするが、その検索窓に性懲りもなく
「神戸、劇団、募集」というワードを入力した。

あの時の虫、演じてみたいという虫はなんだったのかと今考えると、
演技に対する漠然としたイメージ、
「自分とは違う何者かになれるなにか」というなにか、
「感情を表に思いっきりだせる」というようななにか・・・。
今振り返えると、とても説明の難しい感情を持っていたことを思い出す。
いや、イメージの文字面だけを捉えると間違ってはいないが
あの時の自分は本当に演劇(”演劇”という言葉さえも理解していなかった)について何も理解していなかった。
そういえば、劇団で新入準劇団員に演劇へのイメージや何が必要かを質問した時、全員が素晴らしい返答をして驚かされたことを覚えている。
まぁなんにせよ、複雑で抑圧されていた家庭環境の中で育まれていた自分の根っこにいる虫が
何かを表現したいとまた疼きだしたのは間違いない。

検索結果には「劇団神戸」という老舗劇団の名前が表示された。
それが23歳の秋、紛れもなく私の人生を変える”演劇”というものと出逢ったターニングポイントだった。

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