なぜ演劇を始めるのか。Part2

初めての稽古場①

今でも鮮明に覚えている。
「劇団神戸」のホームページに問い合わせをした一週間後の木曜日、
神戸市中山手通にある北野福祉センターの前でこれから起こる何かに、これまた漠然とした不安を抱きながら立っていた。
いや、正確にお伝えするならば、少し離れた路地の角からまだ開いていない福祉センターの門を漠然とした不安を抱きながら見張っていた。になる。

インターネットで知り合った異性と初めて待ち合わせをするように、どんな人物がここに現れるのか見張っていたのである。
一応付け加えておくと、多くの劇団は自前の稽古場というものを持っているわけではなく、
地域のコミュニティーセンターや会議室、スタジオを時間借りして稽古している。
その時点で30年以上続いていた劇団神戸も現状は例外なく地域の2階建ての福祉センターを間借りしていた。
とにかくこの卑怯な待伏せ作戦で15分程待っていたところ、
初老の男性がゆっくりと門の方に近づき、鍵を開け、引き戸を開け、センターの中へ入って行った。
ん?管理人さんか?と思ったが、俺も男だ、ここまできて逃げる訳にはいかない。
(どれだけ臆病なのか)と自分を奮い立たせてセンターの門を潜った。

何故、たかが劇団の稽古場に入るだけのシーンをこんなにしつこく語るのかというと、
それほどまでにあの時の情景は今でも私の胸の映写機にしっかりと刻まれており、
たまにカタカタとその情景、初老の男性の服装や仕草までも鮮明に映し出す。
人間にとって大きなきっかけになった出来事は、それが良い転換でもトラウマになるような出来事でも
しっかりと記憶と心に刻まれているものだ。
それ程に演劇との出逢いは自分の人生を変えてきたのだと今、改めて思う。

すぐに話が脱線してしまう。

それから門を潜り、引き戸を開け、今晩は。と声をかけた。
(当時、平日夜の稽古は18時半からだった)
すると一階の廊下を右に曲がったところにある一部屋から「はい」と返事があった。
恐る恐る声が聞こえた部屋を覗き込むと、
先程の初老の男性が「誰ですか?」と訝しげな表情でこちらを覗き込むように見ていた。
これがこれから見たこともない世界をを私の胸に刻み混んでいく演出家「夏目俊二」先生との出会いだった。

このあと、今では思い出したくもない、
でも消えてくれない先生との初面談があるのだがそれはまた次回。

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